1/27/2015

いつかどこかで起こっていたようなこと

1月27日火曜日
 電車に乗っていた。ターミナルになっている大きな駅に着く手前で減速し、その駅に着くまでの最後の数百メートル、電車はゆっくりと進んだ。窓際に立って外を眺めていたぼくの目線の先には電車用の大きな車庫のような倉庫があり、トタンのくすんだ水色がぼくの好きな色だった。そんなことを思いながらその車庫のような倉庫(もしくは倉庫のような車庫)を眺めていたら、その建物の隙間に、一瞬だけだったがキャッチボールをする男ふたりが見えた。ちょうど昼ごろだったから、昼食を食べ終えて運動をしていたのだろうと想像する。ただ、そんなくすんだトタンの倉庫の脇で、大人の男ふたりが作業着を着てキャッチボールをしている光景はぼくの目には印象的に映った。ひと昔前なら、どこかアメリカの田舎町を通過する列車からそんな光景が見られたんじゃないかというようなイメージが頭を過り、すこしばかり感傷的とも言えるような気分が、その瞬間こみ上げてきたのだった。
 次もその駅の手前に差しかかったら、きっと窓際に立ってまたトタンの色に見とれるだろう。そしてそのときには、そのトタンの色の向こうに、遠い国のいつかの哀愁を感じようとするかもしれない。ぼくが憧れるのは、そんな遠い日の、写真集や映画でしか見たことのないようなかすんだ映像だ。