4/30/2013

土曜日の過ごし方



 「永井と原さんの関係は知ってるんでしょ?」—すごく久しぶりにお会いした、タンバリンギャラリーの濱口さんの口から出たその言葉に目を丸くした。
 土曜日が休日だと、朝からラジオが気分を良くしてくれる。先日の土曜日、午前中はネムの小屋作りをした。実家で飼っていたピー太の鳥かごはネムにはすこし小さい。と言っても朝ご飯をラジオを聴きながらゆっくり食べたりしていたら時間が無くなり、ホームセンターへ資材を買いに行っただけ。翌日すこし作業を進めるが、まだこれから。出来上がった小屋を、そしてその中にネムが居ることを想像してワクワクしているところ。こういう時にザッツのモノ作りの経験と知識が頼もしい。
 遅めの午後に東京へ出て、御茶ノ水のgallery bauhausへ。ロバートフランクの写真展が、展示内容を変えて二回やることを知った。その一回目の最終日がその日だった。中に入って入場料を払いながら僕とザッツは目を合わせて静かに驚いた。ギャラリー内ではパリ・テキサスのサントラの最後の曲、ライクーダーの"Dark was the night"流れていたのだ。二週間前のクロージングイベントでの自分の朗読に、パリ・テキサスのサントラをBGMとして使っていたのだった。ロバートフランクは好きな写真家で、先日までの自分の展示"MAYBE AMERICANS"というタイトルは少なからず彼の"THE AMERICANS"を意識していた。彼が自分で選んだ訳ではないだろうけど、そんなふうにBGMが共通していたことはうれしい出来事だった。明日から始まる二回目の展示も近々観に行こう。
 夜は初めての等々力、永井宏さんの展覧会が行われている巣巣というお店へ。永井さんはかつてそこでワークショップを行っていたようだし、最近知り合いはじめた人たちも、巣巣に関わっている人が多い。なんとなく今まで行く機会が無かったが、その夜は"象の音楽"のポエトリーリーディングを聴きに。象の音楽は永井さん、村椿菜文さん、イシカワアユミさんのユニットで、永井さんが亡くなってからもお二人で続けられている。
すこし遅れて店内に入るともう朗読は始まっていた。その日ゲスト出演者として来ていたチャンキー松本さんに席を譲ってもらえて、一番後ろの壁際の席に。隣に座っていたのがタンバリンの濱口さんだった。
 途中の休憩時間に永井さんの展示を観て回り、濱口さんに自分の近況などを話していた。ブルーグラスが好きな濱口さんたちもきっと聴いているんじゃないかと思ったので、Lonesome Stringsのことを話に出した。バンド名ではピンと来ない様子だったのでどんな編成か、そしてバンジョーの原さんの名前を出した時のことだった。原さんは知ってるよ、それじゃあ聴いてるはずだ。という言葉の次に、
「永井と原さんの関係は知ってるんでしょ?」
ええっ?......訊くと、永井さんはずっと原さんからバンジョーを教わっていたというのだ。青山のspace yuiでの2008年の個展"a great swimmer and banjoman"でのオープニングでは、原さんのバンジョーライブもあったという。2008年の夏、それは僕が葉山までの徒歩旅行をした19歳の夏で、そして、その青山space yuiの個展会場で初めてぼくは永井さんにお会いしたのだ。「原さんとはなにかご縁がありそうだ」と先日の日記に書いたが、まさかこんなところで繋がりがあったとは。そのことが判明した後の朗読はそれまで以上に気持ちのいい空間で、チャンキーさんの影絵との共演もすごくきれいだった。
 憧れている人や物、好きな人たちとの繋がりが見えてくると、自分の立ち位置もすこし確認できるような気分で、今のところ大丈夫。と言い聞かせられる。