新しい青の時代


iPhoneに残っていた、その昼間に撮った写真。



 1か月ほど前のことだったと思うが、休みだった日の夕方に家から出掛けるとき、僕は妻に置き手紙を書いて出た。特に書いておかなければならないような内容ではなく、「鍋にカレーをつくったから夜食べて」という程度のことだったと思う。それだけの小さなコミュニケーションでもちゃんと置いておきたくなって、夜に先に帰宅する彼女がその手紙に気付く時のことを思うと、すこし恥ずかしいが、やさしい気持ちになった。その日の昼間、山田稔明さんの音楽を聴いていなかったとしても、僕はその置き手紙を書いていただろうか。
 僕の色は子供のころから「青」だった。記憶が正しければ、兄が緑系、僕が青系、そして姉が赤やその他の女の子っぽい色を担当していた。冬場の上着などは特にそんなふうに分けられていた気がする。僕に関しては、小学校から高校まで続けたサッカーのユニフォームはずっと青系の色だったし、学年ごとに色分けされていた高校の体操着も、青色の年だった。僕は青色を担当する人間だと思って生きてきた。正直に言うと今は、青というよりも「紺色」が好きだ。すこし大人になったということだろうか。
まあ個人的な長い前置きだが、そんな訳で、山田さんが今年ソロとしては初の全国流通版として完成させたアルバムのタイトルが『新しい青の時代』とわかったときは、なんとなくうれしい気持ちがした。
 話は戻り、『新しい青の時代』を部屋で流していたあの日の昼、僕は申し訳ないことに気が付いた。8月の終わりに鎌倉でのライブ会場でやっと手に入れたそのCDが、引っ越しの色々に紛れて机の上で下敷きになっていたのだ。しばらく見つけられなかったものを見つけた昂りではなく、昔好きだったものを久しぶりに見つけたような気分だった。そんな安心感があった。だが早速CDをセットして流れてきた音楽は、それまでに聴き慣れていたものとはなんとなく違う感じがした。高校生の時に聴き始めたGOMES THE HITMANの音楽が僕の中には定着していて、普段山田さんのCDを聴くとしても大体ソロのものよりGOMES時代のものを選んでいた。最近はあまりライブにも行けていなかったということもある。きっと無意識のうちに、青春の思い出と共に、あの頃の音を今でも求めていたのだろう。とりあえず新しいCDを流しながら洗濯をしたりすこし料理をしたり、写真のことをやったりした。そんな普段の時間を過ごしているうちに、いつの間にかその音楽が、今の自分の生活にちゃんと寄り添ってくれている感じがした。その感覚。生活を見守ってくれる感じ、共に暮らしていく感じ。それこそが、僕が山田さんの音楽から感じさせてもらえるもので、好きでいる理由なんだと改めてわかった気がした。細かいサウンドのことなどは正直何もわからない。ただ自分にとって気持ちいいかどうかが全て、ということでよければ、これだけは言える。その日の、秋のはじまりのやさしい日差しも手伝って、僕は本当に気持ちよく温かな昼間を過ごしたのだ。そして、置き手紙を書いて出た。


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Atsushi Sugie Exhibition - Photos and Text
'MAYBE AMERICANS+'
2013年11月25日(月) - 2014年1月19日(日)
at Troubadour (横浜、たまプラーザ)

Special Night!
12月1日(日) open19:30 / start20:00
Live : 山田稔明

Poetry Reading : 杉江篤志
¥1000 + food order       more info
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