11/25/2012

GOOD PEOPLE


 自分の写真に対していいコメントをしてもらえることが続くと、自分がこの先進むべき道、歩いて行きたい道がすこしずつ見えてくる。本当にいいと思ってくれているかどうかは簡単に伝わるものだ。この旅の間に撮っている写真も見たい!ときれいな目でグッと見つめられると本当にうれしい。写真は一昨日のサンクスギビングパーティーでのひとコマ。キッチンの片隅で、三人が並んで僕のzineを見てくれているのが可笑しかった。ポートランドを居心地がいいと思える理由はいくつも思い浮かぶが、ひとつまた思ったのは、それなりに教養のある人が多いのかもしれないということ。コーヒーショップや古本屋が多いというのは文化面が豊かな気がする。そしてこれは偶然かもしれないが、カメラのことをよく知っている人も多い。写真の話になると、どんなカメラを使っているの?とまず聞かれ、フィルムは何を使ってるの?レンズは何ミリのやつ?自分で現像してるの?と具体的な質問が続く。別に写真をやっている人という訳でないのに、そういう知識を持っている人が多いのだ。(幸運にもそういう人に出会えているということもあるだろうが) 街を歩いていてもなんとなくそんな雰囲気を感じられる。落ち着きがあるというか。けど別にハイソな感じとかそんなことはなく、むしろフレンドリーだ。ポートランドに暮らす人々はこの街が、そしてこの街の人々が好きなんだなというのも伝わってくる。彼ら自身の口から"People are nice here."というような言葉を何度も耳にする。自分の街をそういうふうに思える人がたくさんいるのはいい。そしてそう言える人がたくさんいる街はいいに決まってる。ダウンタウンの方へ行けば路上生活者もよく見掛けるし、僕のような旅行者には見えないこともたくさんあるだろうが、色んなことがうまく回っている街なんだろうと思う。食が豊かというのも本当にいい。オーガニックの食材はもちろん、ベジタリアンメニューも大体どの店に行っても用意されている。それとアメリカで一番のサイクルシティだとも聞く。そんな土地柄が心地いい。カリフォルニアを見た後で最後にポートランドに落ち着いているのはいい流れだ。そしてなによりもこの家、マリーとマイクのところに滞在できているのが幸運だ。彼らを通じて出会っているTANNER GOODSのみんなはそれぞれ個性があって才能もありそう(そう思わせるような雰囲気のある人が多い)で、本当によくしてくれている。知り合いがいない状態で来ていてもポートランドをこうも好きだと思うことができただろうか、と今となっては意味の無いことを考え、きっとできなかっただろうと答えを出す。それくらい彼らと出会えていることは大きい。そんな彼らと過ごしたサンクスギビングの夜はやっぱりお腹がぱんぱんになった。みんなが苦しい苦しいと言っていた。その後みんなで食後の散歩に出掛けるというのもなんだか温かい光景で、遠くに見える大したことのない夜景もきれいに思えた。
 先日書いたヴェンダースの本をすこし読み進めた。日本で持っている一冊はたぶんまだちゃんと文章は読んでいなかったのだろう、知らないストーリーがたくさんある。だから見覚えのない写真がいくつもあることにもすこし納得。写真に添えられた簡単な英文を、たまに辞書で単語を調べながらゆっくり読んでいくと、写真がよく理解できる。そして写真自体もいい写真だなあ、とじわじわ感じてきた。なんとなく以前は写真に文章を添えることはかっこ悪いような気がしていた時期がある。文章で説明なんてせず写真だけで表現したい、と思っていた。けどきっとそれは写真と文章がうまく使われた作品を知らなかっただけで、そしてそれを意識し始めたのは写真家渋谷ゆりさんの本「UNDER EXPOSURE JOURNAL」を読んでからだと思う。この二冊はこの先何度も見返すことになるだろう。写真で伝えきれない背景の物語を文章から読み取れたとき、その写真の隅々からストーリーが語られてくる。そして「写真」の可能性に改めて興奮する。そのときそこに在ったものしか写せないし、そこに在ったものは写ってしまっているのだ。すこしずつ自分のやりたいことが見えてくる。

2012.11.24 Sat. afternoon wrote.